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会津若松上り最終21:00 万馬研太朗

 会津若松へ初めて行ったのは、中学1年の校外学習でした。鶴ヶ城戊辰戦争で落城して以来、悲願の再築という事で先生たちのほうがワクワクしていたような気がします。私たちはそんな事より授業が無いだけで嬉しくて、どこへ行っても楽しい劣等生の集まりでした。
 その楽しい日の後で私は盲腸になって入院してしまって、スナップ写真を注文する事など忘れていました。そしたら、担任のT先生(女性音楽教師)が、私が写っているのを10枚近く買っていてくれて「お金はいいよ」ってプレゼントしてくれたのです。恐い音楽の先生だったけど、音楽劣等生私には優しい先生だったのかなあ。
 今、私はこんな曲を作詞作曲していますって言ったら、きっと腰抜かすんじゃないかなあ。♪音符が苦手でリコーダーが大嫌いでした。今でも編曲の石井務さんにデタラメ音符を指摘されていますから。それでも曲が作れるのはギターのおかげです。ギターについては、またの機会に書いてみたいと思います。
 次に会津と出会うのは、「会津もめん」を探して旅に出た時です。なんとなく「会津木綿」と書くよりも「もめん」のほうがいいかと思うのですが、ま、どっちでもいいか。福島駅の西口にある物産館で1メートルぐらいのものを買ったら、反物でほしくなりました。
 会津もめんには沢山の柄があるのですが、その時は柄の名前もナンバーとかも無くて「この柄」と言わないとわからないという信じられない商売のしかたでした。製造している工場で直接販売もしていて、反物なら宅配便で送ってくれるというので電話をしたら「この柄」といっても、ワカリマセ~ン。ファクスで送っても白黒じゃねの。今ならスマホでちゃっちゃと注文できちゃいますが。
 「これじゃ埒が明かねぃ」なら「工場へ一度来てみて下さい」という言葉に誘われて、夏の終わりの磐越西線に乗って会津の旅に出ることにしました。工場はさすがに時代を感じさせる趣でワクワクしてきます。女将さんが優しく迎えてくれまして、気に入った柄をすぐに5本ほど買ったら、端切れをオマケに頂きました。これ、もっと欲しいな~。「こっちにいっぱいあっから」と言ってくれたオジサンは、暑い日だったのでジャツを脱いで半そで下着姿で商品整理中。優しく沢山見せてくれたので、選り取り見取り、明るい柄から渋い柄まで沢山ゲットする事ができました。帰る間際に「えっ」あのオジサン「会長~」って呼ばれているではありませんか!なんと私は会長様とは知らずにあれやこれやと、大きな失礼は無かったと思うのですが、大変失礼いたしました。暑い暑い夏の日にゾッと背筋が寒くなった出来事でした。反省。
 さあ、帰りの電車は何時かなと会津若松駅の時刻表示を見ると、上りの最終は
21:00。これじゃその辺りで1杯やっていたら帰れなくなりますね。と、その時思っただけで、まさかこれが曲を作るキーワードになるとは思いもしませんでした。鉄道ファンには「撮り鉄」とか「乗り鉄」とか「時刻表マニア」とかいろいろいますが、私は「ゆる鉄」かな。ローカル電車で季節の風景を楽しみながら、ゆる~い旅を楽しむのが好きです。
 会津若松からの帰りの電車は夏の終わり→秋の始まりの沈みゆく夕陽を見ながら缶チューハイレモン。ツマミはちっちゃい焼き鳥の缶詰を爪楊枝でちびちびと。イヤホーンから流れる曲は松田聖子さんの「風立ちぬ」う~季節にピッタリ。「チュルリラチュルリラ帰りたい帰れないあなたの胸に」なんてね。
 あ、そうだ。21:00終電なら春日八郎さんの「赤いランプの終列車」のような別れの曲にならないかな。演歌の世界では、別れた女は北へ帰るか地方を旅して未練たらたらのパターンですが…。会津から東京へ帰るという逆パターンもあったっていいんじゃないですか。
 そしたらどうやって別れさそうか。芸能人の離婚会見で使われるようになった「価値観の違い」っていうのがいいかも。でも「価値観の違い」ってそのまま歌詞には使えませんので、何か他の言い方で表現しないと。と言う訳で、出だしは「私にとって大切なもの あなたにとって大事なものと 少し違っていた事に 気付いた夏が終わります」うん、松本隆先生の歌詞の足元にも及びませんが、なかなかいいと思います。
 今年の夏に、動画師の彩玉プロダクツのツ兄さんに「会津若松ロケ」の動画制作をお願いしてから、やっと完成しました。歌詞の「色づく田園と白く広がる蕎麦の花」を撮るために「夏の終わり」が待ち遠しい気持ちでいっぱいでした。すると、福島民報新聞に「蕎麦の花が満開」の写真が、9月上旬が見ごろ!うわ~今度の日曜天気になれー(水原川の歌詞)その朝は曇り。でも山の向こうの会津の天気はわからないから、行くぞ。思った通り中山峠を超えれば、ほぼ晴れ。磐越西線はゆっくりと走ります。切符は「小さな旅ホリデーパス」で郡山~会津若松間を2往復して「ゆる鉄」を楽しんできました。
 お気に入りの映像は、間奏に使ってもらった「電車が遠く消えてく場面」です。最後の消え方は予想していたのとまったく違いました。くねくね曲がった線路の先の建物に、赤いランプをぽつぽつと見え隠れさせながら夜のなかに沈んでいきました。このランプのポツポツポツポツを、アルペジオに合わせて最後のポツまで使って欲しいとツ兄さんにお願いしまして、思ったとおりに出来上がりました。編曲の石井務さん最終調整ありがとうございました。ツニーミュージック楽しいですね。

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会津若松上り最終21:00歌詞

私にとって大切なもの あなたにとって大事なものと
少し違っていた事に 気付いた夏が終わります
色づく田園と 白く広がる蕎麦の花
流れる雲は急ぎ足 頬なでる風は秋の色
ああ…今夜泣きながら 電車に乗ると決めました
会津若松 上りの最終 21時

あなたの夢を叶えるために 今日まで私生きてきました
ひとつの道は何時の間に ここで二つに別れます
ホームのアナウンス 二人の腕をほどかせる
涙ににじむ街灯り やさしい人にサヨウナラ
ああ…今夜東京へ ひとりで帰ると決めました
郡山から やまびこ22時21分

プロフィール

万馬研太朗福島県在住。多くの作品は福島や二本松を題材にして、演歌・歌謡曲・POPSの作詞・作曲を行っている。コミックソングも得意分野。演歌でも歌謡曲でもない、新しくもなく古くもない中間的なジャンルを提唱しており、中間歌謡曲と位置づけしている。すでに60作品以上YouTubeニコニコ動画で配信されているが、代表作は「滝桜」「花筏ハナイカダ」「黄昏のダンディ」「十三歳のサムライ」など。「イカニンジンの歌」は福島の地元アイドル「餃子っ娘ジュニア&ひとくち餃子」に提供され、CMソングにも起用されている。また、自ら撮影した動画や写真は石井朗の名前で彩玉プロダクツへ提供している。