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初恋の丘「鳥石山」~万馬研太朗

 「は~る~まだあさい~」で始まる「鳥石山物語」は、ちょうど今頃の季節。卒業間近の二人が、ふる里の丘の上で別れを惜しむ情景を歌ったものです。鳥石山は、福島県二本松市を走る東北本線の南側にあって、三角おにぎり🍙のような岩と一本の桜の木が電車からも見る事が出来ます。「山」といっても小高い丘と言ったところで、向かい側のかんのん丘陵との間に細長く広がる「おもて町」を見渡す事ができます。ここから見る安達太良山に沈む夕陽も、とってもロマンチックです。
 母親の実家がふもとにあったので、子どもの頃は夏休みに泊まりに行ってはセミとりやクワガタとりをしてよく登ったものでした。東北本線の踏切を渡って若い男女が鳥石山のほうへ登っていくと、それを見つけた従兄弟や近所の子どもが「アベックだ!」「アベックが行ったぞ!」(アベックは古いですね、今はカップルですね)と叫んで、気付かれないように充分な距離をとって後をつけていくのです。そして麦畑などに隠れてカップルの様子を伺うのです。そこで、ちょっとでも抱擁などしたらボクたちは大興奮!鬼の首でもとったような騒ぎで、大満足といったところでした。子どもながらに羨ましかったのでしょうね。
 鳥石山がデートコースとして良かったと思うのは頂上からの眺めも勿論ですが、登り口から急な坂の「くねくね小径」。ここでカップルは必然的に手をつなぐ事ができます。私も恋などした高校生の頃は二人で登ってみたかったと思うのですが、それに気がついたのは自分の子どもを連れて登った時でした。残念。
 私が初めて女の子と手をつないだのは、霞ケ城の少年隊の丘から笠松の方へ下りる崖の細い道でした。そのあたりの少ない経験を活かしながらの作詞になりました。松任谷由実さんが何かの記事で「経験だけ書いたら1曲で終わっちゃう」と言っていましたが、「海を見ていた午後」は素敵ですね。「ソーダ水の中を貨物船が通る」っていう横浜を歌った曲は傑作と言われています。私もよく「こんな経験あるんですか」なんてきかれますが、それはもう少ない経験を最大にふくらませた作り事に他なりません。でも、その中の「感動した心」は間違いなく本物だと思って書いています。
 「君と僕のコンチェルト」では36本のポプラの木が突然無くなってしまいました。それよりも前の事でしたが、鳥石山の「くねくね小径」も無くなってしまっていたのです。すぐ下を通る道路の拡張工事で削り取られてしまったのです。これもショックでした。
 「東京へ行く君」と「ふる里に残る僕」は古くからのテーマですが、石井務さんの編曲によって、ドラマチックな中に郷愁を感じさせる仕上がりになりました。動画はツ兄さんから譲り受けたビデオカメラで頑張りましたよ。私の初のビデオ撮影作品で、下手くそだけど初恋を思い出しながらの、うるうる涙のロケでした。鳥石山の桜が満開になってから、もう一度撮影に行きました。かんのん丘陵のほうから撮ったのが1番のお気に入りです。そして私は勝手に鳥石山の桜に名前をつけてみました。「初恋桜」と。

 

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プロフィール
万馬研太朗福島県在住。多くの作品は福島や二本松を題材にして、演歌・歌謡曲・POPSの作詞・作曲を行っている。コミックソングも得意分野。演歌でも歌謡曲でもない、新しくもなく古くもない中間的なジャンルを提唱しており、中間歌謡曲と位置づけしている。すでに60作品以上YouTubeニコニコ動画で配信されているが、代表作は「滝桜」「花筏ハナイカダ」「黄昏のダンディ」「十三歳のサムライ」など。「イカニンジンの歌」は福島の地元アイドル「餃子っ娘ジュニア&ひとくち餃子」に提供され、CMソングにも起用されている。また、自ら撮影した動画や写真は石井朗の名前で彩玉プロダクツへ提供している。

鳥石山物語 歌詞
春まだ浅い 鳥石山に
卒業間近の 君と僕がいた
くねくね小径 胡桃の木の辺り
初めて二人 手を繋いだね
夕暮れの町を 流れる川のように
鈍行列車の窓の 灯りが綺麗だ
大好きな町で 僕はいつまでも
ここで暮らしていくと 僕は君に言った
初恋悲し 鳥石山物語

風が冷たい 鳥石山に
旅立ち前の 君と僕がいた
鳥石の横 桜の木の下で
そっと君の 肩を抱いたよ
細長い町に 滑り込んできた
特急列車が駅に 止まったみたいだ
あれに乗ったなら 私は東京へ
きっと行けると思う 君は僕に言った
初恋悲し 鳥石山物語