DTMって、なに？
編曲について～「ヘクサムシの宿」を例に
波 「今日は、編曲の石井さんにいろいろと聞いてみようと思います。よろしくお願いします。作詞・作曲はイメージできますが、編曲というと、どういう作業なんですか？」
石井「万馬さんが作ったメモのような楽譜と、ギター弾き語りの録音をもとに、DTM（デスク・トップ・ミュージック）による音源で色彩をつける作業です。」
波 「メモのような楽譜ですか？」
石井「おおよそのリズムとコードが記されています。ギターの原曲を聞いて、歌詞を熟読して、それに合った音色をイメージして作ります。コードや構成は私が変更する場合もあります。前奏や間奏などは作曲しますね。」
波 「ここに、『ヘクサムシの宿』の譜面を持ってきていただきましたが、確かに、リズムとコードだけですね。DTMについて、もっと詳しく教えてください。」
石井「DAW（デジタル・オーディオ・ワークステーション）というソフトを使います。私はSinger Song Writer（SSW）とStudio One（STO）という2種類を使っています。SSWで楽譜を打ち込み、出力したWAVEファイルをSTOでエフェクトをかけるという流れです。」
波 「私のような素人にはよくわかりませんが、マウスだけで打ち込んでいくのですか？」
石井「MIDI鍵盤もありますが、マウスのほうが早いですね。ピアノが弾けませんから。（笑）SSWの良いところは、一つ一つの音の微妙な強弱がマウス操作でもつけやすいところです。そのかわりエフェクトが使いにくく、音圧が出ないのでSTOで仕上げています。」
波 「エフェクトって、何ですか？」
石井「音圧を上げるコンプレッサーやリミッター、周波数を強調したり減衰させるイコラーザー、空間的に音を広げるリバーブ、エコーのような残響を作るディレイ、左右に音を振り分けるパン・・・」
波 「いろいろあるんですね。それをこんなに沢山の波形に一つずつかけるんですか？気が遠くなります。」
石井「グラフで視覚的にも確認できますが、結局は自分の耳だけが頼りなんですよ。スピーカーによっても変わってしまうので、ヘッドホン・スピーカー・車の中・スマホなど、複数のメディアで再生して気に入らなければ修正しています。編曲よりもミキシングのほうが時間はかかる作業かもしれません。」
波 「こだわりはありますか？」
石井「万馬さんが作った作品は未完成で、絵画で言えばスケッチのようなものだと思っています。キャンバスに描かれた白黒のスケッチに、私が絵の具で色彩をつけていく作業だと思っています。そのために音ばかりではなく、歌詞の意味についても深読みするので、よく万馬さんに『そこまで深い意味で書いたつもりはないけど、確かにその通りだ。いつも俺がイメージした通りの編曲になっている。』とよく言われます。」
波 「これからについて教えてください。」
石井「私はアマチュアなので、これ以上システムを高価なものに拡張するつもりはありません。私が使える音源を最大限に生かせるように、編曲やミキシングの技術を磨いていきたいです。」
波 「今日はどうもありがとうございました。」
プロフィール
石井務：長野県在住。福島県生まれ。ツニーミュージック作品全般で、編曲やミキシングを担当している。作曲も手掛け、「Fine ski holiday」「小さな紫色の花束に添えて」「飛べるよ、いつか」「ざくざく～二本松」などがある。また、てぃ～あいの名前で、「よい子に贈るよい子の歌集」ではコーラスを、「農民画家」ではチェロを担当している。
ヘクサムシの宿 歌詞
秋深し街道宿場町 草鞋ぬぐ時
一人の僧侶が言った
「この町では虫一匹 殺してなりません」
風呂上がり熱燗一本つけ 眠りつくだけ
草木も眠るという 丑三つ時
それは起こった 地獄への入り口
何かが顔を横切る また戻って来た
無意識に平手打ち プニュっとつぶれた
ウッ何だ この臭いは ウッウッウ～～ 悶絶
ヘクサムシが一匹二匹 十匹百匹 千匹二千匹
部屋を埋め尽くし 宿を埋め尽くし
町を埋め尽くす
祟りじゃ～～
祟りじゃ～～ ヘクサムシの祟りじゃ～～
僧侶が叫ぶ地獄絵図 ヘクサムシの宿
夜が明けるのを待ちかねてた ヘクサムシたち
隣の城下町に飛んで行った お天道様に南無阿弥陀仏
白いもの好きな虫たちは 何処へ行くのか
紅い腰巻きよりも 白いフンドシ
大好きなのは お城の白い壁
へばり付いたらもう駄目 二度と離れない
退治しろ殿様が 踏みっ潰した
ウッ何だこの臭いは ウッウッウ～～ 落城
ヘクサムシが一万二万 十万百万 千万二千万
城を埋め尽くし 國を埋め尽くし
全て埋め尽くす
祟りじゃ～～
祟りじゃ～～ ヘクサムシの祟りじゃ～～
僧侶が叫ぶ断末魔 ヘクサムシの國
