ツニーミュージックのブログ

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とあるサークルとのコラボ作品から② 「深い森の魔女」~石井務

 次に取り掛かったのが「深い森の魔女」。この作品は、先に歌詞が完成していました。ヘンゼルとグレーテルの魔女は、本当はやさしい人だった。魔女の視点からこの作品を描いた。という歌詞のコンセプトでした。私は、西洋の魔女ならば、オーケストラ作品にしようと思い作曲を開始しました。標題音楽ですね。冒頭は未明の深い森の中。ベースとバイオリンが奏でる森の和音に、フルートが孤独のライトモチーフ。次第に明るくなり、目の前にお菓子の家が登場する、というイメージ。一番はお菓子の家の前で作業しながら、不気味で悲しく、やさしい魔女を表現しました。二番は鳥につれられてきた子どもたちと家族になりたいと願って、月を見上げる。想像の中で楽しい家族生活を思い描くシーンは、ワルツにしました。こうして、めったに作曲しない私の代表作ともいえるオーケストラ作品が完成したのです。サークルのミキシング担当者に提出したあとは、Skypeで細部に亘って細かい注文を付けました。こうしてCDが出来上がったのです。

 しかし、順風満帆とはいきません。人生はそんなもんです。M3常連だった、依頼してきたこの音楽サークルがどういうわけか頓挫しました。はじめのうちに数枚CDが売れただけで、この作品は入手困難になってしまったのです。「これでは作品がお蔵入りになってしまう。作品も私もかわいそうだ。」

 サークルが頓挫した以上、著作権は作者にあると考えました。作詞者さんと歌い手さんに許可を得て、動画を制作することにしたのです。サークル色を出さず、曲のイメージで絵師さんを探しました。良い時代になりましたね。最近は「ココナラ」というものがあります。私がイメージした、物語の挿絵風に描いてくれる絵師さんを見つけたのです。細かい注文も聞いてくれて、絶対に割に合わないような価格で描いていただきました。魔女の肖像は、「優しく、不気味で、悲しい」という注文に見事の応えてくれました。ちなみに、魔女が手にしている花は「マトリカリア」、花言葉は「集う喜び」。花は絵師さんのアイディアです。

 こうしてこの作品がYouTubeにアップされ、日の目を見ることができたのです。

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「深い森の魔女」 歌詞 

 作詞:Ayu  作曲・編曲:石井務

 

木が覆う地 ひとりで生きる

森の外では食べ物がないと

だから作ったの お菓子の家を

足が棒になり 迷ったときは

この家を食べて ゆっくり眠って

歓迎するよ 癒しの魔法で

この世の王は 苦しいことから

目をそむけては 魔女のせいにして

逃れ逃れて 深い森の中

魔女とわかれば 皆いなくなる

幸せの魔法 笑顔の魔法

寒さも飢えも なくしてあげる

傷つけはしない 誰かの笑顔で

癒されたいと 満月に祈る

 

ある日小鳥が 連れてきた子供

夢中で食べる 二人を見守り

お話ししたいと 勇気をだした

驚く二人に 正体隠して

温かいミルク 温かいベッド

笑顔がおどる 久しぶりの時

逃げてしまうの? 魔女とあかしたら

受け入れられる? ううん、言ってはダメ

もう一人には なりたくないけど

全てを話し 家族になれたら

 

怯える顔と くずれる瞳

求めたのは… 描いてたのは…

駆け出す背中 滲んで見えない

私は一人 深い森へ去る

 

プロフィール

石井務:長野県在住。福島県生まれ。ツニーミュージック作品全般で、編曲やミキシングを担当している。作曲も手掛け、「Fine ski holiday」「小さな紫色の花束に添えて」「飛べるよ、いつか」「ざくざく~二本松」などがある。また、てぃ~あいの名前で、「よい子に贈るよい子の歌集」ではコーラスを、「農民画家」ではチェロを担当している。