桜を見に来てサクラになる
「滝桜」 万馬研太朗
それは、滝桜の動画を撮りに三春町に行った時の事です。フーテンの寅さんの妹の名前はサクラでして、寅さんの商売にもサクラが登場しますよね。私、実はサクラをやる事になってしまったのです。いえ、決していかがわしい商売ではありませんので、安心して読んで下さいませ。
まずは、「滝桜」の撮影に集中、集中。俺はノリノリ行け行けだぜ。と、その時、「あの～、桜をピンク色に撮るにはどうしたらいいですか？」と声をかけられました。なんと！可愛い女性の二人連れに。大きいカメラ持っているとそれらしくカメラマンに見えるのかしらん。私は丁寧に露出補正の仕方や、逆光の使い方などをアドバイスさせて頂きました。彼女らの撮った写真のなかに、何枚かのピンク色の桜がある事を祈るばかりです。
最近は女性の方も、１眼レフに長～いレンズを付けて競馬場で馬を撮ってたり、ミラーレスというカッコいいカメラ持ってたり、見てるだけで楽しくなります。私もミラーレス１眼に昔のレンズのＳＭＣタクマーとかツァイスのレンズを付けて、「お散歩写真」とか「ゆる鉄写真」とか撮ってみたいと思ってます。が、まだミラーレス１眼を買ってませんので何時になることやら。
さて、撮影も一段落。売店の集まる広場をパトロールすればニジマスの焼いたのが食いたくなって、それを食えばちょと小さい缶ビールでも。（電車だから）そしたら岩手県から来られたというご夫婦と相席に。まさに「滝桜」の歌詞の「小さな旅のつもり二人っきりで」でじゃありませんか。いいな～ぁ、旦那様が誘ってくれたそうで、会津に泊まって滝桜を観にきたらちょうど満開でラッキーだわ私たち。だって。
私は名刺を渡して、今日の滝桜の動画を「滝桜」という曲でYouTubeにアップしますので、どうぞよろしくお願い致しますと宣伝してお別れした次第です。
そしていよいよ私がサクラになる時間が来ました。広場の端っこの郵便局のブース。滝桜の切手を売ってるのですが、客がまったく寄り付きません。私が近づくとニコニコ笑顔で「いらっしゃいませー」ときたもんだ。あんまり愛想が良すぎるってのも気持ち悪いんですけど～。「私、見に来ただけで買いませんから。」「いえいえ、滝桜について少しだけ説明させて下さいませ。」と、三春町に滝桜の子供の桜が何本あるとか、○○寺の桜が何たらかんたらとか話がノンストップです。あんまり真面目なので、私は根負けして「もう話いいけど、客が５人くらい来るまでここに居てやるから。」なんて言ってしまったのです。そして気づいたのです。これって『サクラ』だよね。
ん？今思えば、サクラってよりアユ釣りに使うおとりのアユにするために私は捕まってしまったんじゃねの？ま、いいかー。そのあと、お客さんでいっぱいになったから、めでたしめでたしのお話にしましょうね。結局、切手買っちゃったよ。
プロフィール
万馬研太朗：福島県在住。多くの作品は福島や二本松を題材にして、演歌・歌謡曲・POPSの作詞・作曲を行っている。コミックソングも得意分野。演歌でも歌謡曲でもない、新しくもなく古くもない中間的なジャンルを提唱しており、中間歌謡曲と位置づけしている。すでに60作品以上YouTubeやニコニコ動画で配信されているが、代表作は「滝桜」「花筏～ハナイカダ」「黄昏のダンディ」「十三歳のサムライ」など。「イカニンジンの歌」は福島の地元アイドル「餃子っ娘ジュニア＆ひとくち餃子」に提供され、CMソングにも起用されている。また、自ら撮影した動画や写真は石井朗の名前で彩玉プロダクツへ提供している。
「滝桜」歌詞
あなたに誘われて みちのくの春
小さな旅のつもり 二人っきりで
三春という町は 三つの花々が
一度に咲く所と 聞いて来ました
千年命の桜なら 悲しい女も数知れず
この下歩いたことでしょう 私もその一人
短い命でも燃やし尽くせばいい
声が聞こえる 風にはらはら 滝桜
明かりが灯る頃 菜の花畑
つまずいた坂道で すがりつく
小雨がポツポツと 頬を濡らして
私の涙かくす 帰り道
あなたの気持ちが痛いほど わかっているから嬉しくて
ついて行くことに決めました 心の中で
短い命でも燃やし尽くせばいい
声が聞こえる 風にはらはら 滝桜
短い命でも燃やし尽くせばいい
声が聞こえる 風にはらはら 滝桜
声が聞こえる 風にはらはら 滝桜
